NPO法人子育てkitchenグループ
理事長 田中由美子
子育てkitchenグループ設立にあたって
幅広いジャンルから子育てを応援
「子育て」の最中は無我夢中、とにかく必死です。
その「子育て」期をほぼ終えた今だからこそわかること、だからこそ自信をもって伝えられることがわたしたちにはたくさんあります。
3男1女を育ててきて、何が何だかわからずに一番戸惑ったのは第一子。そして、子育てのあり方を一番葛藤したのは末っ子。同じ親から生まれても個性は様々。どの子にも試行錯誤の日々なのです。
子どもは親のマネがしたい
子どもの笑顔には優しくなれるけど、泣き声はかんべんしてほしい、
なんで泣いているの? なにがしたいの?
ある日、じっと子どもを見ていてはっとしました。
《あ! わたしのマネをしている》
笑い方も、怒り方も、行動も。
わたしが料理をしていれば、シンク下からボウルや泡だて器を出してくるし、洗濯物を干していれば、ようやく歩くかどうかなのに洗濯かごから濡れた洗濯物を1枚ずつ取っては床に落とすのです。掃除機をかけていれば掃除機を追いかけてきて……。どれも満足げな顔でやっていました。
ボウルや洗濯物を取り上げると、とたんに泣き出しました。
これはもしかして、一緒にやっているつもりかもしれない。
だったら、子どもと一緒にやってみよう。
そう思って意識して一緒にやり始めたのは、長男が1歳半のころでした。
包丁というハードル
一緒にやりたいを越えると、今度はひとりでやりたがりました。
けれども、お料理をひとりでやらせるのは、わたしにとってハードルが高かったのです。包丁です。
でも、長男は親と同じようにひとりで包丁を持ちたがりました。
考えた末、「包丁を使うときの約束」をしっかりと決め、約束が守れなければ返してもらうことを徹底し、小ぶりのよく切れる包丁を渡すことにしました。
しばらくは緊張のあまり、料理後のわたしはどっと疲れていましたが、子どもは満面の笑顔。自信たっぷりに「あのね、これみーちゃんつくったの!」と父親に話していました。父親も楽しそうに笑い、会話もはずんで食事も楽しくなりました。
子どものやりたいを叶えるには
子どもとやると、時間はかかるし疲れるけど、いいこともたくさん生まれる。
そう確信したわたしは、その時から、自分がイライラしないで子どもにやらせてあげられる方法を探し始めました。小さな工夫をひとつひとつ重ねて、「できない」を「できる」に変えていったのです。
慣れてくると、すぐに時間もかからなくなり、家族のご飯を作るほど頼りになる存在になりました。
『できなかったら、できるように工夫する』。
この考え方は我が子全員に浸透し、今ではわたしのほうが子どものやり方を見て参考にしているくらい。料理そのもの以上に、これぞ台所から体得した「生きる力」です。次世代を担っていくのに必要な力なのです。
子どもが小さい時にしかできないことが、ある
そんな我が家の様子を見ていた友人たちは、「うちはムリ。時間もないし、そのうちね」と言い、マネする人はあまりいませんでした。
しかし、子どもが高校生になると、大変化がありました。みんな「うちの子、高校生になって何もできないの。どうしよう。部活が忙しくて、教えてあげたくても子どもに時間がないし…」と言い始めました。
子育て期間を振り返ると、子どもが楽しそうに寄ってきて一緒にやりたがったのは、我が子4人とも〈2歳前後からの5~7年間程度〉でした。その後は親よりもお友達、習い事、部活、勉強…と優先順位が変わってしまうのです。
親のそばにしょっちゅう寄ってきた時の「今度ね」の時間は戻ってきません。
そのときを大切にしていくことが「子育て」なのだと強く実感しています。
子どものチャレンジ、やる気を認め、楽に子育てできる環境作りを推し進めるために、料理だけでなく、防災・絵本・健康・語学・人材教育など子育てにまつわる各ジャンルの専門家と共に「子育てkitchenグループ」としてNPO法人設立をいたしました。子どもも大人も「楽に」に育ちあう「楽しい」社会をめざしています。
皆様のご理解とご支援のほどをよろしくお願いいたします。